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学会情報 第38回日本美容外科学会総会

プログラム・抄録集

会 期 2015年9月22日(火)・23日(水)
会 場 パシフィコ横浜 会議センター
会 長 吉本信也
昭和大学医学部形成外科学講座
主任教授
副会長 出口正巳
カリスクリニック
院長

脂肪過多乳腺に対する乳腺切除術

【 目 的 】
乳腺切除術は技術的には難しい手術ではないが、形成外科分野では男性における女性化乳房しかなく、主に乳腺外科分野の手術とされている。
そのため形成外科や美容外科にとって扱うことが少ない手術である。一方、当院は以前より性同一性障害のFemale to Male(FTM)症例に対して乳腺切除術を行
う数少ないクリニックとして、多くの症例が来院されており、乳腺切除術の機会に恵まれている。
今回、乳腺切除術を行うにあたり、脂肪と乳腺との境界が不明瞭な脂肪過多乳腺を経験した。
発生頻度は決して高くないが、不用意に臨むと乳腺の残存のリスクが高まる可能性があり、正常乳腺と比較し検討を行ったので報告する。

【 方 法 】
当施設で2014年5月から2015年5月に乳腺切除術を行った性同一性障害のFTM患者45例のうち、脂肪過多乳腺5例を対象にした。
術式は乳房下垂が無いもしくは軽度のものに対しては乳輪縁切開による乳腺摘出術、乳房下垂が高度なものに対しては乳房切断術を行い、乳輪乳頭移植を行った。
乳腺は摘出後に正常乳腺との比較を行った。

【 結 果 】
乳輪縁切開による乳腺摘出術が3例、乳腺摘出術が2例であった。
手術中に乳腺が残存しており、追加摘出を3例で行った。1例で術後血腫を認めた。
摘出した乳腺組織は乳腺内に脂肪組織の浸潤を認め、周囲との境界が不明瞭であった。

【 考 察 】
乳腺は皮肩の付属器の一種で、皮下筋膜浅葉に包まれており、その外側に皮下筋膜深葉が存在する。
乳腺後面は平坦で、剥離が容易であるが、乳腺前面は皮層とクーパー靭帯で結びついており、凹凸を認める。
乳房下垂や脂肪が多い乳腺の場合は、クーパー靭帯の隙間に脂肪が増大し、凹凸がさらに強くなっている。
それゆえ間違った剥離層に入り、乳腺組織の残存といった合併症をきたす可能性があり、脂肪過多の乳腺切除の際には解剖的差異を念頭に置きながら、手術を行うことが必要であると考えられた。